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住宅金融支援機構理事長 毛利 信二

 独立行政法人住宅金融支援機構理事長の毛利です。皆様には、日頃より当機構の業務にご理解・ご支援を賜っておりますことに厚く御礼申し上げます。

 初めに、令和6年能登半島地震とその後の豪雨災害で今も不自由な生活を続けていらっしゃる被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。当機構は、発災以来直ちに国・公共団体を始め多くの関係機関と連携しながら被災者支援に奔走して参りましたが、全ての被災者が平穏な生活を取り戻していただける日まで、総力を挙げて支援を続けて参りますので、どうぞ何なりとご相談ください。

 さて、当機構は、2007年4月の設立以来、国民の皆様を始め数多くのステークホルダーの方々に支えられ、四期にわたる中期目標期間に掲げられた目標を達成することで、我が国の住生活の質の向上と地域の課題解決に向けて政策実施機能を発揮して参りました。
 しかしながら、少子高齢化の一層の進展等社会経済情勢が大きく変化する中、住まいを巡る課題も一層複雑化し、市場メカニズムを補完する公的金融の果たす役割にも変化が求められます。このため、第五期中期目標期間におきましては、新たな目標の達成に取り組むだけではなく、前身である住宅金融公庫の時代から蓄積してきた住宅ローンに係る情報やノウハウを生かし、市場経済の中で構築してきた様々な金融支援ツールにさらに磨きをかけつつ、変化する社会経済情勢に的確に対応して国民の皆様の住生活の一層の向上を目指し、総力を挙げて取り組んで参る覚悟です。

 とりわけ、現下の「物価と金利のダブル上昇」がもたらしている住宅ローン利用者・利用予定者の方々の不安の声にきちんとお応えし、公的金融機関として公正・客観的な立場から金利上昇リスクに関する情報を国民の皆様にお伝えして参ります。併せて、金利上昇下においても【フラット35】等長期固定の住宅ローンができるだけアフォーダブルなご負担でご利用いただけるよう、最大限の努力をして参ります。また、子育て負担の軽減や既存住宅の流通促進、さらには空き家問題への対応、地球環境に優しい住宅の普及等のため、よりご利用しやすい多様な金利引下げメニューをご提供するとともに、良質な賃貸住宅への融資も積極的に展開して参ります。なお、低金利下で顕在化した【フラット35】の不適正利用に対しては、コンプライアンス遵守宣言を発したMBAJ(日本モーゲージバンカー協議会)等とも的確に連携しつつ、引き続き厳正な対応をして参ります。
 次に、「二つの老い」問題が深刻化するマンションについては、管理の質の向上を目指し、計画的な修繕費用に充てる資金の確保に資するよう、マンションすまい・る債の魅力向上と共用部分リフォーム融資の適切なご利用拡大等を図って参ります。加えて、マンション関連法改正法案の成立を待って新たにマンションの一棟リノベーション、除却等に対しても必要な資金支援を行って参ります。

 一方、シニア世代にも住宅ローン返済を続けておられる世帯が少なくないことや家族数、生活スタイルの変化等に柔軟に対応し、併せて空き家として放置されることによる外部不経済の発生をできるだけ防止する観点から、リフォームや住替えを応援する【リ・バース60】について、新たに創設した固定金利型と併せてその一層の普及を図って参ります。
 さらに、激甚化・頻発化する自然災害に対しては、蓄積してきた災害対応のノウハウを被災自治体等に積極的に提供するとともに、地域支え合いセンター等との連携により被災者に寄り添った支援を行う「災害ケースマネジメント」を応援して参ります。また、被災自治体、法曹・金融・建築等の専門家などマルチセクターとの協働により、ワンストップの対応を現地でリードし、被災者の一刻も早い住まいの再建に総力を挙げて参ります。また、災害予防の観点から、既に災害レッドゾーンへの金利優遇は停止しておりますが、新たに国・公共団体の利子補給と相俟って【リ・バース60】の活用による既存住宅の耐震改修の促進に貢献して参ります。

 こうした取組みを着実に推進するためには、安定的な財務基盤の維持と専門人材の確保・育成が欠かせません。従来から、機構では、統合的なリスク管理の下、投資家との丁寧な対話により適確な資金調達と運用に務めて参りましたが、市場との対話をさらに深めて参ります。また、私は、従来より役職員の現場への共感力こそ機構の力の源泉として重視しており、人事・処遇の大胆な改善により機構の人財力に一層の磨きをかけて参ります。
 併せて、機構経営上、人財投資と車の両輪をなすのがデジタル戦略です。第四期中期計画期間中に加速化してきたデジタル技術の導入成果を踏まえ、さらにその先を見据えた「デジタル戦略2035」を策定し、人材確保と併せてDXを本格的に始動させたいと考えており、その一環として新たな住生活支援サービスの提供を第五期中期目標期間中に開始する予定です。

 いつの時代も住まいがしあわせの原点であることに変わりはありません。これからも機構がパーパスとする「住まいのしあわせを、ともにつくる。」存在であり続けられるよう、全職員参加で作り上げた「住宅金融支援機構ビジョン2035」に沿って中長期的視点に立った経営方針の下、ステークホルダーの皆様とともに新たな挑戦を止めることなく進化を続けて参る決意です。

 皆様には、どうかこれまでと変わらぬご理解、ご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


令和7年4月
住宅金融支援機構 理事長

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