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機構の業務を深く知るキーワード【金融工学】【フラット35】提供のカギは金融工学にあり?

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皆さんは「金融工学」という言葉をご存じですか? 皆さんの中には、工学部や理工学部で金融工学について学んだ方もいるかもしれません。

金融工学とは、金融に関する課題を数学やコンピューター等を用い、工学的に分析する学問であり、リスク管理等に役立てられます。

住宅金融支援機構の主幹業務である【フラット35】では、民間金融機関がお客さまに対して融資した全期間固定金利の住宅ローンの債権を、機構が買い取るという仕組み(買取型)を採用しています。
では、この買取資金はどこから工面するのでしょうか。
銀行等の民間金融機関は預金を元手に融資を行います。しかし、機構には預金業務がありません。そのため、買い取った住宅ローンを担保にMBS(資産担保証券)という債券を発行し、機関投資家に販売することで、買取資金を調達しています。
MBSの発行額は、年間約2兆円にのぼります。
機構は、【フラット35】を安定的に提供するだけでなく、国内最大級の発行体として、日本の証券化市場の発展にも貢献しているのです。
そのため、金融工学を用いたリスク管理は極めて重要であり、機構の根幹をなす業務の一つです。


さまざまなリスクと統合的な管理

機構業務に関わる代表的なリスクをご紹介します。

市場リスク

金利等のリスク・ファクターの変動に伴い、期間損益が変動するリスクです。住宅ローンを主な資産とする機構においては、期限前償還リスク、再調達・再運用リスク、パイプラインリスク等があります。例えば、期限前償還リスクとは、金利の低下等に伴い貸付金に係る期限前償還額が増加し、予想していた利息収入を逸失すること等により期間損益が悪化するリスクです。このリスクを管理するために、期限前償還モデルにより償還額を推計するとともに、多様な年限による債券発行等を組み合わせて資金を調達したり、住宅ローンの証券化という金融手法を用いています。

信用リスク

機構が保有する債権に係る債務者の信用力の悪化等に伴い、資産の価値が減少または消失することにより損失を被るリスクです。住宅ローン債権の買取審査および与信審査にあたっては、審査に関する基準や実施方法を定め、適正な審査を行っています。また、機構が保有する貸付債権等については、回収が不能となる危険性の度合いに応じて資産を分類し、貸倒引当金を算定しています。

これら住宅ローン等の事業の特性を踏まえたリスク管理を実施するとともに、機構の業務・特性を踏まえ、各リスクを総体的に把握・評価することによる統合的な観点からのリスク管理も行っています。

年間約2兆円のMBSを発行している政府系金融機関で、皆さんが大学で学んだ金融工学を活かしませんか?