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機構の業務を深く知るキーワード【まちづくり】政府系金融機関のまちづくりとは?

機構の業務を深く知るキーワード「まちづくり」の画像

災害に強いまちづくりを支援することも住宅金融支援機構の大きな役割のひとつです。老朽化したマンションの建替えや、古い木造住宅が密集する地域の再開発にも積極的な支援を行っています。これらを通じて、耐震化・不燃化を促進し、災害に強いまちづくりを支援しています。こうした融資は、政策上重要で民間金融機関だけでは十分な対応が困難な分野です。そのため、政府系金融機関である機構が積極的に取り組んでいかなければならないと考えています。

高経年マンションの課題

国土交通省の公表資料によると、2020年末時点で全国のマンションストックは約675万戸で、そこに1,500万人以上が居住し、なくてはならない居住形態として定着しています。一方で、築40年超の高経年マンションは、2020年末時点で約103万戸、20年後には400万戸を超える見込みで、大規模修繕や建替えといった適切な維持管理が不足しているマンションの増加が問題視されています。
高経年マンションは、適切な管理が行われないと耐震性の不足により災害時に倒壊のおそれがあり、人命の危険や緊急輸送道路を塞ぐ可能性があります。さらに、このような「建物の老朽化」だけでなく、「居住者の高齢化」も進行しています。
居住者が高齢になり年金収入だけになると、将来の修繕に向けて毎月積み立てる「修繕積立金」を支払うことが難しくなる場合もあり、適切な修繕工事が実施できない懸念もあります。

民間金融機関では対応困難な分野に直接融資(まちづくり融資)

こうした課題の解決をサポートするために、機構では主に以下のような事業に融資を行っています。

  • マンション建替事業
  • 防災街区整備事業
  • 市街地再開発事業

機構では、事業当初に作られる準備組合への融資や、その後事業が進み建替え前後の居住者の権利変換計画が認可されるまでのつなぎ融資等を行っています。
いずれも民間金融機関だけでは十分な対応が困難な領域をカバーし、住民の方々が安心して建替えを進められるよう支援する取組です。

マンションのライフサイクルに対応する機構制度

機構ではマンション建替事業や再開発事業への融資に加え、マンションのライフサイクルに応じて、管理組合を金融面からバックアップする制度を設けています。
大規模修繕に備えた修繕積立金の計画的な積立てを支援する「マンションすまい・る債」や大規模修繕工事等の費用を融資する「マンション共用部分リフォーム融資」等、機構制度で一体的にマンションの適切な維持管理を支援しています。

マンションのライフサイクルに対応する機構制度の図

マンションストックの維持管理・再生に向けた取組

機構の取組はこうした融資だけに留まらず、マンションストックの維持管理・再生に向けた取組も進めています。
高経年マンションの課題に対して、機構が事務局として主導し、適切な修繕工事等の実施によるマンションの価値向上を目的として、マンション管理等関係団体、民間金融機関、コンサルタント、行政機関(国土交通省・東京都)、有識者(弁護士)等を参加メンバーとする「マンションの価値向上に資する金融支援のあり方勉強会」を平成30年度に設立しました。 勉強会では、高経年マンションの課題のうち、金融インフラの整備の観点から特に重要であると考える課題を洗い出し、取組の方向性を整理しました。また、それらを実行するために、令和元年度には新たに「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」を設立し、現在も取組を続けています。
協議会では、適切な修繕工事をサポートするための「マンションライフサイクルシミュレーション~長期修繕ナビ~」の作成や、融資における与信モデルの構築等の取組を進めています。

高経年マンションの増加により、ますます社会的意義を増していく機構のまちづくり融資。社会的注目度の高いこの業務のやりがいについて、協議会の企画・運営にも携わった職員インタビューもぜひご覧ください。